フェレットの全身性コロナウイルス感染症
症例の概要
コロナウイルス感染による、猫伝染性腹膜炎(FIP)と似た症状を示す全身性の疾患です。
様々な臓器に肉芽腫というできものを作ることもあります。
フェレットに関しては近年発見された疾患のため病気の詳細や治療法は未だ確立されていません。
経過および検査
ご紹介する症例は4歳10か月のパスバレーの女の子です。
元気・食欲がなくなってしまい、エコー検査で脾臓に腫瘤(できもの)と腹腔内リンパ節の腫大が認められました。
開腹手術で脾臓とリンパ節摘出を行い、病理検査と特殊な染色法を用いて検査を行いました。
病理検査・特殊染色・蛋白泳動検査の結果を総合して、フェレット(全身性)コロナウイルス感染症との確定診断が得られました。
治療
手術で摘出された脾臓
検査のための脾臓摘出手術により物理的な圧迫がなくなったおかげで、食欲・元気がもどってきました。
ウイルスによる血管炎を防ぐステロイド療法をご提案しましたが、まずは無治療で経過観察することになりました。
手術から11か月後の検診で、体重の減少と、腹腔内の複数のリンパ節が再び腫大していることがわかりました。
リンパ節の細胞診では反応性リンパ節と判定され、コロナウイルスに反応した炎症が起きているものと考えられました。
飼い主様と相談し、この時点でステロイド治療を開始しました。
現在はリンパ節の腫れ具合や血液の検査を定期的に行いながらお薬の量を調節しています。
投薬開始から3か月が経過していますが、体重も増えはじめ元気で過ごしてくれています。
獣医師のコメント
本疾患はまだまだ報告数が少なく、治療法も確立されていない病気です。
さまざまな試行錯誤の末診断に至り、今のところ順調な経過をたどっています。
この子が現在6歳半。寿命を全うできるまでお薬の力を借りながらがんばってくれるようサポートしていきたいと思います。