症例集
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症例集 case report

ハリネズミの子宮蓄膿症

症例の概要

子宮蓄膿症は、子宮内に細菌が入り込み、膿がたまってしまう疾患です。

外見だけでは腎臓や膀胱など泌尿器からの出血と、子宮からの出血を見分けることはできませんので、詳しい検査が必要です。

シニア期の女の子の血尿には注意を払いましょう。

経過および検査

ハリネズミの女の子が、血尿を繰り返すようになり病院にやってきました。

元気も食欲もいつも通りですが、トイレをみるとおしっこが赤くなっていました。

超音波検査でおなかの中を見ると子宮が大きく腫れ、中には液体がたまっていました。

血尿の原因はどうやらこの子宮からの出血のようでした。

治療

手術写真

治療の選択肢はおおまかに以下の2つです。

①内科療法

抗生剤を投与して子宮内の細菌を減らす方法ですが、この方法で子宮蓄膿症が完治することはありません。

何度もぶり返すことや、お薬が効かないことも珍しくありません。

②外科療法

全身麻酔下で開腹手術を行い、卵巣と子宮を摘出します。手術は多くの場合日帰りで行います。

手術で摘出した組織を使って、以下のような詳しい検査が行えます。

・細菌培養検査:増殖している細菌の種類を特定し、その結果に応じて抗生物質を投与します。

・病理組織学的検査:子宮や卵巣に腫瘍を伴っていないか細胞レベルでの異常を調べます。

 

今回のハリネズミさんは、はじめに内科療法を試みましたが、やはり時々血尿が出るので、元気なうちに手術に踏み切ることになりました。

手術は全身麻酔下で行います。小動物の麻酔は人工呼吸管理ができないため、慎重な麻酔管理が必要です。

仰向け状態でおなかを切開し、大きくなった子宮と卵巣を摘出しました。

強い炎症による癒着がなかったため手術は30分弱で終了。

その日のうちに退院して、1週間後の抜歯の頃にはすっかり元気な姿を見せてくれました。

病理検査の結果、子宮内膜の過形成と内膜ポリープがみとめられました。

獣医師のコメント

ハリネズミの子宮蓄膿症は、血尿をみつけて来院される方がほとんどです。

元気や食欲はいつもと変わりないことが多いですが、ぐったりしていたり、食欲が落ちて痩せてきていたりする場合は、危険な状態かもしれません。

子宮内の細菌が全身性の感染症を引き起こしたり、膿がたまりすぎて子宮が大きく腫れ、ひどい場合はおなかの中で子宮が破裂してしまったりすることもあります。

子宮が破裂してしまうと、手術の難易度が跳ね上がり、術後の生存確率も下がってしまいます。

この子は腫瘍性の病変がなく、破裂や癒着もなかったので順調に回復し、今ではすっかり元気です。

エキゾチックアニマルの麻酔リスクは無視できませんが、だからこそ、

今回のように可能な限り元気でリスクが少ないうちに手術をして、根治を目指すのが理想的です。

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