犬の椎間板ヘルニア
症例の概要
ミニチュアダックスやトイプードルといえば日本の人気犬種ですが、ヘルニアを発症しやすい犬種でもあります。
軽いものでは首や腰の痛みが主な症状ですが、重症の場合は手足が完全にマヒしたり、排泄が困難になったりします。
経過および検査
ダックスの男の子が、ちょっとした段差を乗り越えたのをきっかけに歩けなくなってしまい、病院にやってきました。
検査すると後ろ足の反射がなく、足先の痛覚も失われつつありました。
椎間板ヘルニアでは、症状の重症度を下表のような1~5の「グレード」を使って表現します。
この子の場合はグレード4の症例でした。
治療
椎間板ヘルニアの治療は、グレードによって異なります。
首や腰の痛みだけの軽い症状であれば内科治療で十分対処できますが、グレード5の重症のものになると外科手術を行っても完治する(問題なく歩行できるようになる)とは限りません。
飼い主さまと協議の末、今回は手術に踏み切ることになりました。
手術前のMRI検査で、病変の場所(何番目の脊椎に異常があるか)と、脊髄神経の炎症の程度を確認します。
手術は片側椎弓切除術といって、背中を切開して背骨に一部穴をあけて脊髄神経の圧迫を取り除くものです。
術後まもなく、自力で体重を支えたり、ゆっくり関節を動かしたりといったリハビリ生活が始まります。
ご家族にはおうちで行うマッサージやリハビリの練習をしていただきます。
この子は手術から4日後、自力で体重を支えることができるようになり、7日後には短いお散歩ができるまでに回復しました。
獣医師のコメント
椎間板ヘルニアの治療は、脊髄神経の損傷の程度によって内容も経過も大きく異なります。
今回は典型的な一例をご紹介させていただきました。
ダックスは特に椎間板ヘルニアの多い犬種ですが、飼い主さまの工夫で発症のリスクを減らすことが可能です。
ごはんやおやつのあげすぎで体重を増やしすぎないことと、脊椎に負担をかけない抱っこのしかたを心がけましょう。